腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「もしかしたら、缶コーヒーは飲まないかもしれない……」



私はコーヒーを飲まないから味なんてわからないけど、もし好き嫌いがあったらどうしよう……。

ボタンに手を添えて、悩んでいたときだった。



「あれ、乃々ちゃん?」



背後から名前を呼ばれて、びくりと肩が震える。

あっ……。

驚いて、ボタン押しちゃった……。

ガコンッという音をたてながら、自動販売機から缶コーヒーが出てきた。

私はそれを取る前に、振り返って声の主を確認した。



「新川先輩っ……!」



そこにいたのは、笑顔で私に手を振る新川先輩。

私はすぐに缶コーヒーを取って、先輩にお辞儀をした。



「お久しぶりですっ……!」

「うん、最近来てくれなかったから、寂しかったよ」



少し寂しそうな表情を見せた新川先輩に、罪悪感が募る。