腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「じゃあ、質問を変えるよ」



なんとか平静を装って、“優しい京ちゃん”を演じ続ける。



「誰と会ってたの?」



乃々は俺の質問に、笑顔で答えた。



「新川先輩っていう人っ」



……新川、先輩?

朝の光景が、フラッシュバックする。



『……しんか、せん……い……』



――ああ、だから……。


だからあんなにもあの言葉が、引っかかったのか。

嫌な予感の原因はこれかと、俺の中に残っていた冷静な自分が呟く。

乃々の頭の中に、今俺以外のヤツがいると思うだけで、はらわたが煮えくり返るようだった。

問題はここからだ。

その相手が、どんなヤツか。

女か……それとも男か。



「その人のフルネームは?」

「えっと……確か、新川、和己……だったと思う」



かずみ? ……女?