腹黒王子さまは私のことが大好きらしい。



「ごめんね。終わったら俺も、すぐに教室に戻るから」



2人で視聴覚室を出て、別の方向に歩き出す。



「行ってらっしゃい、京ちゃんっ」



笑顔で手を振る乃々を脳裏に焼き付けて、急いで会議室に向かった。

会議が始まったはいいものの、進行の遅い3年のせいで、随分と長引いた。

スムーズにいけば15分もかからないような内容だったのに、5限が始まるギリギリになってしまった。

急いで乃々のもとへ戻ろうと、教室へ向かう。

教室に着いた途端、自分の隣の席があいていることに気づいて、胸が騒ついた。


……乃々?

……どうしていないんだ?


乃々の机に、ランチバッグが掛かっていない。

それはつまり、まだ教室に帰ってきていないことを意味していた。

おかしい。視聴覚室で別れてから、30分は経っている。

視聴覚室から教室までは、3分もあれば着く距離だ。

……もしかして、帰ってくる途中で何か良くないことがあったのか……?

乃々に何かあったらと考えるだけで、ゾッとした。

心配になって、探しに行こうとしたときだった。