「ふふっ、きょおちゃん、だぁっ……」



乃々は嬉しそうにそう言って、頰を擦り寄せてきた。

待て、待ってくれ。

なんだ、これ……。

だいたい乃々はどれだけ起こしても起きなくて、俺が抱きかかえて洗面室まで連れていったところで、やっと目を覚まして……そういう流れの、はずなのに。



「の、の……どうしたの?」



嬉しそうに俺に抱きついている乃々に、そう問いかける。

ヤバい……心臓が、バカみたいに騒いでいる。

そんな抱きつかれたら……乃々に、聞こえてしまいそうなんだけど……。



「えへへっ……昨日は京ちゃんと会えなかったから……本物だぁってっ」



……何、朝から可愛いこと言ってるの……。

乃々も、俺に会いたいと思ってくれてた……?

そんなそぶり少しも見せてなかったし、俺がいなくてもいつも平気みたいだから、考えてもいなかった。


あーもう……可愛すぎてどうしよう……。

このまま学校に行かずに、連れ去りたい。