昨日は苦痛だった。

父親の会社の取引先との顔合わせや、その後の食事会もだけど、一番の理由は、乃々に会えなかったからだ。

休日は会えなくても仕方がない。

学校がないし、会う口実がない限りは我慢するしかないと割りきれる。

でも……俺の平日を潰すのは、父親でも許せない。

朝は乃々を起こして一緒に登校して、授業中はクソつまらない教師の話をBGMに乃々を眺めて、昼は視聴覚室で2人きりで食べて、放課後は一緒に帰って……。

俺にとって、平日は終始至福の時間。

だから父親の会社関係の予定や会食も、できるだけ休日にしてくれと言っているのに……たまに予定を入れられてしまう。

せめて声だけでも聞きたいと放課後に電話をしたけど、逆効果だった。

俺に会えなくて寂しいなんて可愛すぎることを言われて、その場で会食を抜け出そうとしたくらいだ。

我慢した俺を褒めてほしい。

そんな、乃々に会えない無意味な昨日を終えた俺は今、乃々の部屋の前にいる。

いつもはノックをするけど、その余裕もなかった。

部屋の扉を開けると、いつものようにスヤスヤと気持ちよさそうに眠る乃々の姿。


あー……可愛い。


天使のような……いや、乃々は天使よりも可愛いに決まっているけど、これはもののたとえ。いくら眺めていたって飽きない寝顔を、近くでそっと見つめる。