私の中で新川先輩が、“いい人”という立ち位置になった。
今日、この教室に来てよかったなぁ……ふふっ。
自然と頰が緩んで、両頬に手を添える。
新川先輩はそんな私を見て、意味深な笑みを浮かべた。
「……乃々ちゃん、覚えておいたほうがいいよ」
……ん? 何をだろう……?
「男が女の子に優しくするのは、下心があるからだって」
「……?」
下心……?
それって、どういう……?
――キーンコーンカーンコーン。
「あっ……予鈴……」
あっという間に時間が過ぎていたことを知り、慌てて食べかけのお弁当を片付ける。
「私、次移動教室なので、戻りますっ……!」
もう少し話したかったけど……授業に遅刻するわけにはいかない。

