寝坊助でドジで間抜けで……なんにもできない私と、いつも一緒にいてくれる京ちゃん。
私がどんなヘマをしたって、怒られたことは一度もない。
優しい優しい京ちゃん。
私はそんな京ちゃんが大好き。
幼なじみとしても、1人の男の人としても――。
でもそんなこと、京ちゃんは知らないし、言うつもりもなかった。
京ちゃんにとって私は、妹みたいな存在。
この恋は、誰にも内緒。
「お母さん、行ってきます!」
カバンを持って、リビングを出て玄関に向かう。
「行ってらっしゃい。あ、そうだ乃々花、今日お父さんとお母さん、仕事で夜遅くなりそうなの」
家を出る間際、投げられた言葉に少しだけ肩を落とす。
今日は1人、か……。
「うん、わかった……! お仕事頑張ってね……!」
でも、もう私も高校1年生で、寂しいだなんてわがままを言える年でもないし……我慢しよう。