どうやらその心配はいらなかったらしく、ホッとする。

……処分する手間が省けてよかった。

俺の乃々に近づこうとしたり、俺に向けられた表情を盗み見したヤツは……社会的に抹殺してやる。

乃々の可愛い顔は、俺が独占したい。

他の男になんて、少しだって見せたくないから。

それにしても……そんな幸せそうな顔をされたら、たまらなくなる。

抱きしめたい衝動を堪えるように、行き場のないため息を吐き出した。

靴箱に着くなり、俺は一番上の段に手を伸ばす。



「ちょっと待ってね」

「いつもごめんね、京ちゃん……」

「ふふっ、気にしなくていいよ、このくらい」



申し訳なさそうにする乃々に、笑顔を向けた。

乃々と俺にとって、当たり前なことの1つ。

乃々の靴箱は、1番上の段だ。

身長が低い乃々では届きにくいから、俺が靴を出し入れしてあげている――なんていうのは、ただの口実。

乃々の靴箱を開いて、中身を確認する。



「……今日はあり、か……」



誰にも聞こえないような声で、そう呟いた。