可愛くて可愛くて……俺にとって、世界で唯一の愛しい存在。

……そんなこと、乃々は全く気づいてもいないんだろうけど。

2人で教室を出て、廊下を進む。

……ん?

隣にいる乃々が、なんだか楽しそうに見えて思わず口を開いた。



「どうしたの? ご機嫌だね」



乃々は喜怒哀楽の“怒”を持ち合わせずに生まれてきたような朗らかな性格だから、いつも機嫌はいいけど、今日は周りに花が飛んでいるように見えるほど上機嫌。

何かあったのか?と思い乃々をじっと見ると、図星を突かれたというような反応を見せた。



「え? そ、そうかなっ……?」



恥ずかしそうに顔を赤らめて、ふわりと控えめな笑顔を浮かべた乃々。



「えっと……久しぶりのお泊まり、嬉しいなって思って……えへへっ……」



あー……。

あまりの可愛さに口元が緩みそうになって、急いで手で覆った。

そしてすぐに、周りを確認する。

今の可愛い顔、誰も見てないだろうな……?