「おい、離せ」



え?

突然、腕をつかまれて後ろに引っ張られた。

声の主は、どうやらこうくんのようで、私を夏海ちゃんから引きはがして鋭い視線を向けている。

視線の先にいる夏海ちゃんも、負けじとこうくんを睨みつけていた。



「ちょっと何よ、邪魔しないでくれる? 女同士で友情を育んでる最中なんだけど」

「お前はベタベタしすぎなんだよ。あんま真由に触んな」

「はー? あんたあたしにまで嫉妬するとか引くんですけど。ただの幼なじみのくせに彼氏ヅラ?」

「うっせーな、ブス」



ケンカを始めてしまった2人を、オロオロしながら交互に見つめる。

2人が言い争うのはよくあることで、というより、日常茶飯事かもしれない。
なぜかこうくんと夏海ちゃんはとても仲が悪いのだ。



「あ゛? 誰がブスですって? あたしほどの美人はそうそういないわよ! 目がいってんじゃないの、あんた!?」

「あー……うるせぇ、朝から喚くな」

「ふ、2人ともっ、ちょっと落ち着いて……! ケンカはやめようっ……?」



本格的に苛立ちを見せ始めた2人を、慌てて止める。