「……じゃあ、さ」
頭上から聞こえた声に、ゆっくりと視線を移す。
「……お試しとかは……ダメ、かな？」
「……え？」
お試し？
「今は俺のこと好きじゃなくても構わないから……お試しで付き合ってほしい」
一瞬、何かの冗談かと思ったけれど、中崎くんの瞳はいたって真剣で、ふざけているようには見えなかった。
ゆっくりと唇を開いた中崎くんを見つめて、話の続きに耳を傾ける。
「俺……花咲さんに好きになってもらえるように努力する。だから、俺と恋愛してくれないかな……？」
……中崎、くん。
“好き”という言葉だけ、噛みしめるように紡ぐ中崎くんに、胸が締めつけられた。
