「煌貴ー!」

「……何?」

「呼んだだけっ」

「なんだよそれ」



前の席から、2人の話し声が聞こえる。

胸の中がモヤモヤしてどうしようもなくて、私は平静を装うのに必死だった。

ダメだ……どうしちゃったんだろう、私……。

この場から、逃げ出したい……っ。

こんな状況になったのは、昨日からだった。

先週あんなに松沢さんに冷たくしていたこうくんが急に優しくなって、今や2人は仲睦まじそうにしている。

あんなに女の子に優しくするこうくんを見たのは初めてかも……。

私の中で、よくわからない感情たちがうごめいている。

今日も朝からずっと仲良く話している2人の姿を、後ろの席から見せつけられている気分だった。

ちょっと……席立とうかな。

もう少しで休み時間終わるけど……なんだか苦しい。

2人を見ていると、胸が痛くなっちゃう。

私が立ち上がろうとしたときだった。



「ねぇ、あんたらいい加減昨日からうるさいんだけど」



隣の席の夏海ちゃんが、こうくんと松沢さんにそう言ったのは。