……なんだよそれ。

なんでそんな、可愛いことしか言えないの?

握る手に力を込めると、また真由がピクッと動いた。



「……そんな可愛いことされたら、離したくなくなるんだけど」



あー、抱きしめたい。

でも抱きしめたら絶対……いろいろと歯止めがきかなくなる。



「か、可愛く、ないっ……」



俺の言葉に慌てた様子で否定する真由。

多分本気でそう思って言っているだろうから、もうこの天然は救いようがない。



「なに言ってんの? 無自覚にもほどがあるって……」



真由が可愛くなかったら、可愛いって言葉が根本から否定される。

俺の中では、“真由=可愛い”。それ以外に存在しない。

俺を喜ばせるのも惑わせるのも、幸せにするのも……全部、お前だけ。



「真由」



1回だけ。そう自分に言い聞かせ、真由のほうへ顔を寄せた。