「かわいらしいんです、見た目も名前も。けれど、すきになった理由は片想いしている人からもらった花だから」


彼は穏やかに目を細めた。


「ああ。俺もじつは、今でも片想いをこじらせている相手に花を贈ったことがある」

「……それは初耳です」


初めて話すのだから当たり前だろう、と彼が言う。

私は胸に痛みを覚えながら、彼が告げる言葉を待った。


「生意気なくせにいっつも俺のあとをついて来るから可愛くて、卒業祝いに花をやったらそれはそれは大喜びだったよ」

「え」

「花の名前を聞いてくるものだから、あえて和名を教えたんだ」

「それって」