博識で偏屈な彼らしい。


窓の外に目を向けると、花壇は彩りに溢れて春の到来をほこらしげに告げていた。


「……春って、いろんな花が咲きますよね」

「ああ」


窓の隙間から風が侵入して、景色の輪郭を柔く撫でた。

彼の持つ書籍でさえ、空気の流れにもてあそばれている。

静寂の中でページのめくれていく音が心地よい。


……今なら、言えるだろうか。


「私のすきな花も、春に咲くんですよ」

「……君の?」


彼とまた、視線がかちあった。