「相手が知らない花の名前を教えるだろうな」

「……もしかしなくても、川端康成(かわばたやすなり)ですよね。それ」

「そう。“花は毎年必ず咲きます”」


川端康成。日本の大正、昭和時代で活躍した文豪のひとりだ。

彼の掌編にこのような言葉がある。曰く──


【別れる男に、花の名を一つ教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。】


「ずいぶんとまあ、具体的ですね」

「まあな。俺のことを忘れないでいてほしいから」