「──もしも、叶わない恋に落ちたらどうしますか」


本からいっさい目を逸らそうとしなかった彼が、こちらに視線をよこした。


「叶わない恋?」
「もしもの話です! たとえばもし、先輩のすきな人が他の誰かと付き合っていたら……」
「まず俺は他の誰かと付き合う人間を好きにはならないが」
「そういうことじゃなくて……」


……だめだ、話がべつの路線に乗り換えそう。


頭を抱えながら、どうしたらこの堅物と言葉のキャッチボールができるだろうと考えた。

まったく、どうしてこの人をすきになったのだろう。

数年越しの片想いを拗らせている身で、そんな思考がぐるぐる巡った。


「……まあ、やる事はひとつじゃないか?」