不安になっていると、「…うん。」と返事をした向葵くん。

ドキドキしながら、少しだけ、向葵くんの方を見てみると、その顔は、少しだけ頬を染めているようで。


──だけど、そのとき、ちょうど、向葵くんの後ろの方から夕陽が差していて、オレンジ色が濃くなっていたから、もしかしたらそのせいかもしれない。


だって、向葵くんだもん。

照れるはずないよね……


サアーっと風が吹き、私たちの間を通り抜けると、ほのかに柑橘系の香りが流れてくる。

(……この香り、好きかも…)

風に攫われる髪を押さえながら、そんなことを思っていた私。


「…なんか、名前で呼ばれるのって案外照れるもんなんだね」


そう言って頬をかいた、向葵くんは、夕陽のオレンジ色のせいじゃないのかもしれないと、思ってしまった──。