「……結衣ちゃん、それ、反則。」

「えっ?」


……それ?

どれのこと…?

向葵くんに抱きしめられながら、もぞもぞと動いて顔を上に向けると、ほんのりと頬が染まっている気がした。

……向葵くん、もしかして………


「……照れて、る……?」


小さな声で、そう尋ねると。


「………ドキドキしすぎてやばいかも。」


そのあとすぐに、向葵くんの胸の奥から私と同じくらい速い鼓動の音が響いていた。

二つの鼓動が重なって、メロディーを奏でていた。