黙ったままの私を気遣ってか「そういえば…」と向葵くんが口を開く。
「少し前に、こうやって隣同士で座ったことあったよね」
「あっ……う、うん。」
確か、あのとき向葵くんに可愛らしいハンカチもらったんだったよね。
…私、そのハンカチ今日持ってる。
かばんの中からそれを取り出すと──
「あ、それ、使ってくれてるんだね」
嬉しそうに微笑んだ向葵くん。
…あっ、笑った。
その表情にホッとしたと同時に、ドキッとときめく心。
頑張れ、私。
向葵くんからもらったハンカチもある。
奈央ちゃんから貸してもらったおまもりもある。
私は、それをぎゅっと握りしめて、向葵くんに向き直った。



