ザッ、ザッ、ザッ──…

何かを踏むような音がしたあと。


「……結衣ちゃん。」


誰かが、私を呼んだ。

振り向かなくても分かる声。

その声を聞いて、私は、泣いてしまいそうだった──


「……向葵、くん……」


そこには、私のメッセージを見て来てくれた、向葵くんの姿があった。

ほんとに来てくれたんだ。

……やばい、泣いちゃいそう……。

思わず、俯いた私。


「隣、いい?」


話しかけられて言葉に詰まった私は、何度も何度も頷いた。

ゆっくりと、私の隣に座る向葵くん。

私たちの間にはひと一人分のスペースが空いているのに、ドキドキしてしまうのは、私が好きだと自覚してしまったから。