ベンチから少し離れた場所で立ち尽くす向葵くんに「…どうかしたの?」と尋ねると「あ、ううん。何でも、ない」と歯切れの悪い言葉を呟いた向葵くん。
……何かあったのかな。
頭をかいたあと、ベンチまでやって来ると、静かに座る向葵くん。
その表情は、少しだけ頬を染めたまま…?
何かあったのか聞こうと思ったけど、男の子だけの会話もあるのかもしれない。
そう思って、言葉を飲み込んだ。
「そ、それより康太に何か嫌なこと言われたりしなかった?」
いきなりそんなことを聞かれて「えっ?」と驚いた声をもらす私。
佐野くんに嫌なこと…?
……どうだったかなぁ。
私の心を動揺させるようなことは言われた気はするけど……



