ベンチから立ち上がり、向葵くんの方へ歩いて行く。
そして耳元で何かを話す佐野くん。
何を話しているんだろう。
二人をじーっと見つめる私。
その直後「はっ?」と驚いた声をあげた向葵くんの方に視線を向けると、かすかに頬が染まっている気がした。
……向葵くん、どうしたんだろう?
私はそれを見て疑問に思う。
向葵くんは「康太、何言って……」と佐野くんの言葉に、動揺している様子。
「んー?まあ、そういうわけでいろいろと応援してる」
そう言うと、ポンッと向葵くんの肩を叩いた佐野くん。
かっこいい二人が並ぶと絵になるなぁ。
……なんか、あれみたい。
一人の女の子をかけて、奪い合う、みたいな物語。
私がその物語の主人公、──なんて、そんなはずないっか。



