「もしかして向葵のこと待ってんの?」


いきなり話しかけられて動揺してしまった私は「……へ?」と変な声をもらす。

だ、って、今……

“向葵のこと待ってんの”って──…


「日坂さん、聞こえてる?」

「え?あっ、ち、違います!」


慌てた私はそれを否定した。


向葵くんと待ち合わせしてる、なんてバレるわけにはいかなかった私は、かばんを握りしめて立ち上がろうとした──


でも、それができなかった。

それは佐野くんが私の肩に手を添えたから。


「──悪い。俺、全部知っててここに来てるから」


えっ……?


「全部知ってる……?」