「結衣ちゃんのほっぺた柔らかかった」


照れることなど一切なく、爽やかに私に言葉をかけてくる向葵くん。

それとは反対に、ドキドキしてばかりの私。

……もうっ、悔しい…っ


私はこれでもかというくらいベンチの端に寄って、向葵くんとの距離を確保する。

(……熱、静まれ…っ)

呪文のように何度も心の中で呟いた。

その願いが叶ったのか、ふわりと風が吹いてきて私の髪がなびくと同時に首元の熱を攫っていく。

あー、涼しい…

これで少しは熱が収まるかも。


「ねえ、結衣ちゃんなんか遠くないかな」

「えっ……そ、そう…?」


動揺してぎこちなくなる言葉。