「これのおかげで醜女(しこめ)扱いしかされてきませんでしたから。だから男の人も苦手なんで、あまり話しかけないでもら――」

「誰?」

藍田くんの低い声が遮って来た。

さっきまでの爽やかな感じとは一転、黒いものを感じて思わず藍田くんを見てしまった。

「……なにがですか? ――」

藍田くん、やっぱり笑ってなかった……。

鋭い目つきでわたしを見て来る。

「こんな可愛い千波ちゃんにそんなクズなこと言ったやつ、誰? 葬ってくるから名前教えて?」

「……――――っ、な、なに言ってんですか!」

衝撃が大きすぎることを言われて、バンッと机を叩いて立ち上がってしまった。

直後、たくさんの視線を感じてはっとした。

ここ図書館!

居たたまれなくなったわたしは、さっき持って来た本とバッグを慌てて手にして、わたしを見て来る来館者さんたちに何度も頭を下げて逃げ出した。

……はずなのに。

「千波ちゃん、ごめんね……?」

どこまでついてくるのこの人―――!