「同い年でしたか。てっきり年上かと……。坂野千波です」

名乗ると、藍田くんはじっとわたしを見て来た。

あ、いつもの来るかな。最近ではからかわれる前にアザのこと、先手を打って自虐ネタにしてるから――

「この――」

「千波ちゃん」

「……へ?」

「て、呼んでもいい?」

にっこりと首を傾げて言う男の子。

自分の左頬をさしていた指が行き場を失ってしまった。

や、やっぱり軟派な人か……! すっと自分の顔が真顔になるのがわかった。

「すみません、わたし男の人と親しくする気ないので、これで失礼します」

「ちょ――」

素早く頭を下げて、適当に本を五、六冊引き抜いて踵を返した。

こういう人とは関わらないのが一番だ。からかわれなくても、男の人と話すの得意じゃないし。

……そんな感じでわたしは逃げた。はずなのに。

「………」

自習席で本を開くわたしの隣に、藍田くんがいた。

そして何故かわたしをじーっと見て来る。