今更だけど、わたしはこの男の子を知らない。

あっさり話しかけてきたり、普通に会話したり、軟派っぽい人だったら離れたい……。男の子に免疫ないし……。

男の子は、一度大きく目を見開いた。

「あ、いきなり声かけたから? 間違えてないよ。ずっと上見てるけど近くに台がなかったから、必要なのあったら取ってあげようと思っただけ」

あ、そういうこと? 確かに高い場所のを取るとき用の移動式階段、近くにはなかった……。

じゃあただの気が利く人?

「でしたか。お手数おかけしまた」

わたしが軽く頭を下げると、男の子は困ったように顔をくしゃりとさせた。

「こっちこそいきなり失礼だった。ごめんね。あと、いつまでも知らない人はいやだから……俺は藍田玲哉(あいだ れいや)っていいます。高一」