振り返ると、背の高い男の子がわたしを見下ろしていた。

少し垂れ気味な目が印象を優しくしていて、真っ黒い髪に装飾品の類は一切ない男の子だった。

けれど全然地味ではなく、爽やかなたたずまい。

軽はずみに女子に声をかけるようには見えないから、もしかしてわたしを知り合いと間違えたのかな……? それとも見た目とは違ってナンパな人?

明らかにわたしの目が胡乱だったのだろう、男の子は「あ、ごめん」と口走った。

「ずっと上の方見てたから、取りたいのあったのかなと思って」

「あ、いえ……探してるのがあるわけじゃなくて、いいのないかなー、と……」

「そう? じゃあ上の全部おろそうか?」

……⁉ なっ……笑顔で何言ってんのこの人!

「さ、さすがにそれはほかの方の迷惑になるかと……」

「あ、そっか。優しいね」

「あ……はは……」

いやいや。優しいどうのじゃなくて、常識の問題でしょ……。

「どういうの探してるの?」

「んー……恋愛についての考察が読みたいんですけど……」

「……自分用?」