それから、土日の全部を、わたしは図書館に通うようになった。

那也の試合がある日まで……。

そしていつもいるのは、椅子だけが並んだスペースの、すみっこ。

「千波ちゃー……」

「半径三メートルに近づかないで。色魔」

「……反省してます」

一週間前の日曜日。

こともあろうにこの色魔こと大天使こと悪魔は、わたしの左頬にキスしてきた。

図書館の中で。

「千波ちゃんが可愛いからつい……」

「……そういう軽いこと言うから――」

「千波ちゃんにしか言わないって、もうわかってるでしょ?」

「う……」

本を手にして腕をいっぱいまで伸ばして距離を取っていたけど、その本を呆気なく奪われてしまった。

それからいつものように隣の椅子に座られた。

「……藍田くん、わたしに何度か謝ってたよね?」