……結局自習スペースを離れて、机はなくて椅子だけが並んでいる場所の、さらにすみっこにやってきた。

すみっこは少し暗い場所だからか、この椅子だけの場所の中でも人気はなかった。

わたしが座って息を整えていると、藍田くんは当然のように隣の椅子に座っている。

「……なんで藍田くんが謝るんですか」

「千波ちゃんがそんな目に遭ってるとは知らなくて……」

「知られてたら怖いんですが」

初対面の人に知られていてたまるか。

「あの、千波ちゃん……?」

……もう呼び方を変えてももらうのは無理っぽい……。

「そもそも、なんでついてくるんですか」

ギッと睨んでしまったけど、藍田くんは全然こたえていないように、さっきまでと変わらない笑顔を浮かべる。

「千波ちゃんといたいから」

「そういう、女子なら誰でもいいようなこと言う人と関わりたくないんです」

「俺、いつそんなこと言った?」

「行動がそう言ってます」

もうらちが明かない。きっぱりはっきり拒絶しないと――

「俺、女子なら誰でもいいじゃなくて、千波ちゃん以外の女子はどうでもいいって考えだよ?」