課長の車は、私でも知ってる有名外車だった。

「久宝課長って、良い車に乗ってるんですね。」

「まぁ、独身だし車もそこそこ好きだし、このくらいしか金の
 使い道がないからな。
 ほら、乗れ!」

そう言われて乗り込んだ助手席は、高級外車だけあって革張りの
乗り心地のいいものだった。

車の中でも、意外と話は尽きない。

流石に二年も一緒に仕事をしてきてるだけあって、引っ込み思案
な性格はなりを潜めてしまったのと、課長のイケボもあってか
心地良さまで感じていた。


「あ、でも、久宝課長、助手席は課長の彼女に悪かったですよね。」

「あ?俺、今は彼女なんていないけど?」

「そうなんですか?意外です。」

「そうか?課長の職についてから仕事が忙しくて、それどころじゃ
 ねーよ。」

ちょっと不貞腐れたような普段見ない課長の顔に笑ってしまう。

「おい、笑うな!
 綾瀬こそ、彼氏は大丈夫なのか?」

「え、私も今フリーなので大丈夫ですよ。ご心配なく。」

「そうなのか?綾瀬こそ、居そうなのにな。」

「いたら残業なんてしてませんよ。」

「そうか?」

「そうです。」

今度は私の不貞腐れた顔を見て、課長が笑う。