新幹線を降りると、レンタカーを借り実家まで30分の道を走る。

車の外には長閑な風景が広がっている。

田んぼに畑、山、川、牧場・・・。

「凄いな!俺、こんな田舎、初めて来たぞ!」

「それは良かったですね。空気も美味しいですよ。」

少し棒読みになりながらも、課長の声に応えていく。

「あ、あの黒い屋根の家が家です。」

「おい、俺んちよりデカくないか?」

「田舎は土地代なんてあってないようなものだから、家なんて
 都会の半分以下で建つよ。
 家なんて、父親が大工なので自分で建てたからね~。
 かなり、安くできてると思うよ。」

「そうなのか?」

「うん。」

車は家の前の駐車場へと入って止まる。

「タカちゃん、行くよ!」

「お、おう!」



「ただいま。」「は~い。」

玄関を開けて中に入るとのんびりとした母の声が聞こえた。

「こっちよ~。」

声は玄関の横にある座敷から聞こえてくる。

「すげ~な、玄関だけで一部屋作れそうだな。」

課長は広い玄関に目をむいている。

「早く靴脱いで、行くよ!」

「はいはい。」

座敷に向かうと、いつもの場所でお茶を啜る両親がいた。

二人で座敷に入り、取りあえず母にお土産のお菓子を渡す。