「タカちゃん、起きて!」

未だ眠っている課長を起こしにかかる、実家に向かう新幹線の
時間まで二時間を切っている。

「今日は、私の実家に行くんでしょ!
 早く起きて!!」

まだ眠そうな目を擦りながら、ダラダラと起き上がる。

そうだよね、まだ眠いよね・・・。

だって、寝てから三時間しか経ってない。

私だって眠い!だが、そうも言ってられない。

今日は決戦の日だ!?

いつもは課長に流されっぱなしだが、今日は、そういう訳にはいか
ないのだ。

私だって、今日こそ結婚を決めたい!

素っ裸の課長の手を引っ張り、無理やりバスルームに放り込むと、
朝食の準備に取り掛かった。



いつもとは打って変わってグダグダする課長を、いつもよりテンション
高い私が尻を叩き、なんとか新幹線の乗車時間に間に合った。

「タカちゃん、行きたくないの?」

「何か緊張するだろ?」

「先週は私が頑張ったんだから、今日はタカちゃんがバシっと決めてよ。」

「俺、腹が痛くなってきた気がする・・・。」

これがあの課長なのか・・・。

仕事とは真逆の態度に、若干イライラが増してくる。

でも、ここは私が大人になろう。


「今日上手くいったら、帰って来てからいっぱいサービスしちゃう。
 タカちゃんの言う事なんでも聞くから、頑張って!」

笑顔つきで課長の肩を軽く叩く。

「ホントに何でも言う事聞くんだな?」

やけに言葉を強調する課長に軽くビクつきながらも、コクコクと首を
縦にふる。

「分かった!俺、頑張る!頑固親父ドンとこい!」

急にテンション高くなった課長に引きつつも、取りあえず胸を
撫でおろした。