「人のこと散々ズルいとか言ってるけど、ズルいのはお前の方だろ」



ふと顔をあげた葉月くんの濡れた頬が、微かに赤く染まっていて。


今度は私が驚きに包まれる。



「あの、それってどういう意味で……っ」



問いかけながら見上げた葉月くんの髪の先から水滴が降ってくる。



「いいよわかんなくて」



本当にわからず、葉月くんを見上げてパチパチと瞬きを繰り返していると、



「その秘密は解かないでね?」



葉月くんが顔を近づけて口角を上げる。


どういう意味かわからないけれど、素顔の葉月くんに胸がキュンと高鳴った。



葉月くんの秘密はまだ解けない。


……ただ、唯一わかってしまったことは。



葉月くんの秘密を解き明かそうとしてる私の方が、葉月くんに溺れてしまいそうになっているってこと。