私のせいで葉月くんまでびしょ濡れだ。


……なのに、どうしてかな。


葉月くんが飛び込んできてくれたことが、嬉しいって思っちゃうんだ。



「ホントお前って目が離せない奴だな」



水に浸かったまま佇む葉月くんが、瞳を緩ませて私を見る。



「……じゃあ、離さないでほしいよ葉月くん!」


「……お前、なに言って」


「だって葉月くんにも私のこと知ってほしいから、えと……もっと見てくれたら嬉しい……です」



せっかく隣の席なんだもん。

改めて伝えるとなんだか少し恥ずかしいけど。



「なにこれ。不意打ちすぎにも程がある」


「っ、」



突然、力を抜いた葉月くんがポスッと私の肩に顔を埋める。


濡れた葉月くんの髪が肌をなぞってくすぐったい。


ドキドキと高鳴る鼓動が葉月くんに聞こえちゃうかもしれない。



「あの、葉月くん……?」


「悪いけど、しばらく顔あげらんない」


「えっ?な、なんで……」


「誰のせいだと思ってんだよ……」



私が答えられずにいると、葉月くんはやっぱり溜め息をついて、私の肩からそっと顔を上げた。