「湊音のテリトリーに入れるのは、わたしくらいでしょう?」



なんだって……!?


真横を通り過ぎたと同時、東條先輩の声がやけに大きく聞こえた。


葉月くんの、テリトリーに?

東條先輩が私へと目をスライドさせた、直後。



「ひゃっ……!?」



パシッと、葉月くんが私の手首を掴むから、ラス1で買ったチョココロネを落としそうになる。



ちょ……なに!?



「こいつに用があるから。ごめん、双葉」


「あの……っ、ちょっと葉月くん!?」



その場を離れる寸前で、ふぅん、と呟いた東條先輩の視線が刺さった気がした。



「いきなり……なに……!?」



手を引っ張られ、そのまま連れてこられたのは資料室。


葉月くんの隠れ家だ。



「聞きたいことがあったから」


「……聞きたいこと?」



その場に座った葉月くんの隣に、息を整えながら私も腰をおろした。