「俺のことはいいから、お前は隙見せんなよ」


「気をつける……っ」


「そもそも、俺以外の奴とふたりきりにならないで?」


「え?なんで……っ、」



疑問符が飛び交って問いかけた直後、胸ポケットに突っ込んでいたスマホが震えた。



「あっ!ごめんね葉月くん!咲希ちゃんからだ!」



慌てて通話ボタンを押して耳に当てる。



「あ、琴莉?もーっ、どこにいるのよー!イケメン観察に行く約束だったでしょう!?」



そういえば朝、咲希ちゃんが言っていた。

約束した覚えはないけど……。



「ごめん咲希ちゃん……!今から教室戻るよ!」



ぶーぶー怒る咲希ちゃんの声を聞きながら、葉月くんを目で追いかけると。




「なんでって、そんなのお前が可愛いからじゃない?」



葉月くんがなにか言っているのに、スマホ越しにバカでかい咲希ちゃんの声が響いて聞き取れなかった。



通話を切ってから、少し先を歩く葉月くんを追いかける。



「は……葉月くん待ってー!聞こえなかったから、今なんて言ったのかもう一回……」


「言わない」


「え!?なんで!?」



結局、何度聞いても、葉月くんは教えてくれなかったのだった。