……と思ったのだけど、葉月くんはすっと身軽に避けて、



「本多はもっと命中率磨いた方がいいんじゃない?バスケもね?」


「……っ!!」



葉月くんに掠りもしなかった本多くんが、見事なでんぐり返しをきめて芝生の上に転がった。


……なんとも綺麗な前転だ。


どんな顔で本多くんを見下ろしていたのか私の角度からは見えなかったけれど。



「……今日はっ、もう見逃してやる!」



情けない声を最後にもらして、打ちのめされた本多くんが圧巻の走りを見せて去っていった。



「……は、は、葉月くん……」



再び静寂に包まれる校舎裏で、緊張の糸がぷつりと切れた私は、ヘナヘナとふらつきながら葉月くんの名前を呼ぶ。



「だから言ったろ?ラブレターじゃないって」



うぅ……。

葉月くんの言う通りだっただけに、ぐうの音も出ない。



「でも、俺も悪かった」


「へ?」


「……お前がラブレターもらって喜んでんじゃねーかって思ったら、なんかムカついた」



葉月くんがふいっとそっぽを向いて呟いた。


その背中が照れているように見えた気がして……。