ハッキリした顔立ちの猫目の美人な人が、葉月くんの隣にいる。


クールビューティ。

耳の横からシュシュでひとつに結んだ黒髪。


落ち着いた雰囲気で、流れるおくれ毛を耳にかけながら、葉月くんと何か話している。



「ちょっとちょっと。なんであの葉月が、東條先輩と!?」



咲希ちゃんの言うその人は、東條双葉(とうじょう ふたば)先輩といって、校内でも何度か見かけたことがある。


とびきりの美人が陸上部のマネージャーらしい……と、聞いたけれど、その本人だ。


ひとつ上の学年で二年生。

ふたりが何を話しているのかまでは聞こえない。



「待ってるからね。湊音」



けど、東條先輩がとても自然に葉月くんを名前で呼ぶから、ふたりが親しいんだってことは伝わってくる。



うーむ。


いつもひとりでいる葉月くんが、こんな風に誰かと一緒にいること自体めずらしい……。



「どういうことなの!?琴莉、早速浮気されてもいーの!?」


「う、浮気って……私と葉月くんはなんでもないんだよ……?」



なんでもない、と自分で言っておいて、胸がチクッと痛みを負う。