「だ、だって……葉月くんが素直じゃないから!」


「素直じゃないのは羽澤もでしょ?」


「なっ!どこが……っ、てか、いいよじゃあ……大会は、ひとりで見に行くからね!」


「そもそもお前と見に行く約束してないと思うんだけど?」



ぐぬぬ……。

葉月くんがイタズラっぽい口調で得意気にからかってくる。



「……じゃあ、咲希ちゃんと行くからいいよ!」


「あれ?一緒に行かないの?」



今度は手のひらを返したようにそんなことを言って混乱させてくる葉月くんは、やっぱり私をからかって楽しんでるんだと思う。



「や……約束してないし!?」



悔しいので同じように言い返してみたけれど。



「じゃあ俺と約束して?」


「……っ、」



なんて言いながら、私が握ったままでいた手を葉月くんが握り返してくる。



「もうっ、しょうがないなぁ……!」


「なに照れてんの?」



く……っ。

まったく、どこまでからかうつもりなのか知らないけど、今日だけは許してあげようと心の中で呟いた。


明後日の大会で、飛鳥くんが跳べることを祈りながら。