でも、葉月くんがそんな言葉を浴びせてくるのは、冷たいからじゃない。



「そうやって全部隠して、ひとりになるの?」


「……、」


「葉月くんが素顔を……本当の自分を隠してるのは、誰とも関わりたくないからじゃないよね」



もしそうなら、手を抜いたままでいいのに、球技大会で点差を縮めたりなんてしない。


校舎裏で私を助けたりもしない。


あのどしゃ降りの雨の中、一度も話したことがなかった及川くんの探し物を探したりなんかしない。



「誰も傷つけたくないから……自分と関わらせたくないからでしょう……?」



傷つけたくないから、ひとりを選んだんでしょう。


空気みたいに、まるで存在していないように。



「全部、傷つけたことを憶えてるから。苦しいんじゃないのかな……」


「やっと解けたの?遅すぎ」



温度を持たないその声は、とても無機質に聞こえた。