あっ、と声が出そうになった。



「俺が跳べるようになった秘密」


「……っ、」



空から私へと降りてきた飛鳥くんの瞳と目が合った。



「でも、俺と羽澤の秘密にしてね?」



飛鳥くんは、空に溶けそうなくらい柔らかい笑みを浮かべると、ポールを持って再び空へと飛び出した。



葉月くん、やっぱりこのままはダメだよ。



そう思ったら、私は再び全力で腕を振って走り出した。



今日はよく走る日だなと思う。


なんでこんなに、私は必死になって走ってるんだろう。


自分のことでもないのに。

髪もボサボサだし、制服だってボロボロなのに。


それって、やっぱり葉月くんのせいだと思うんだよね。



葉月くんのことばっかり考えて、あの日からいつも私は葉月くんを探して、追いかけて。


……見失って。


それでもこうやって、葉月くんが私を走らせてる。


だからやっぱり、ズルいのは葉月くんだよ。