* * *


ハァ……っ。


落ち着きを取り戻したはずの心臓は、全力疾走したせいではち切れそうだ。


陸上部が練習している場所まで来て足を止めると、額の横を汗が流れていく。


掛け声や声援が飛び交う中、飛鳥くんの姿を探した。


今すぐにでも、確かめたいことがあったから。



「やっぱり戻んないみたいだな……瀬川の奴」


「ああ。どうしちまったんだ。あれくらいの高さなら、軽々跳んでたのに」



先輩らしき人達が飛鳥くんに不安そうな視線を送る。


私は、棒高跳びの練習が行われている方へと目をやった。


そこには、ポールを突き刺して、力強く地面を蹴って空へと飛んでいく飛鳥くんの姿がある。


だけど、バーに身体が当たってすとんとマットの上に落下した。


咲希ちゃんが言っていたように、飛鳥くんは調子が悪いのだろう。



「……あ。ダサいとこ見られちゃったね」



ポールを手に、私に気づいた飛鳥くんがこちらまで歩いてくる。