* * *


そして連れてこられたのは非常階段ではなくて、東條先輩たっての希望により、放課後は誰も訪れることのない中庭だった。


な、なんでこんなとこに……?


もしかしたら今日こそは、引っぱたかれるかもしれない。



「今度は別れたんですって?あなた、ふざけてるの?」



髪の先まで怒った東條先輩は、凍える程恐ろしかった。



「私は葉月くんとは付き合ってないです……っ!本当に噂で、それで今度は別れたって噂が……」



ジリジリと距離を縮めてくる東條先輩に怯んでしまいそうになる。



「そんな嘘を、わたしが信用するとでも思ってるの?」


「う、嘘じゃないですよ!」


「どうせ、本当の湊音を知って、一方的に突き放したんでしょう?」



突き放す……?

まだ、本当の葉月くんも、秘密も見つけられていないのに?