劇の練習が本格的にスタートした。

慌ただしい一日が過ぎるのはとても早くて、もう放課後だ。


葉月くんが見つけ出してくれた宝石は、あの日のうちにしっかり及川くんに届けた。


その時、及川くんは、涙目になりながら「ありがとう……」と何度も繰り返した。


私じゃないよ……と、返すのが精一杯で。


不思議そうな顔をしていた及川くんに、見つけてくれたのは葉月くんだよって言ってしまいたかった。


けど、葉月くんはそれを望んでいない。


望んでもいないのに私の口から伝えることは、私の自己満足でしかなくて、一体何になるんだろう。



葉月くんに伝わらないなら、なんの意味もないのに。



「……あ、まただ。飛鳥くん」


「どうしたの、咲希ちゃん?」



帰りの支度をしていると、咲希ちゃんが溜め息をついた。