「私ね、最初は葉月くんがどんな人かわからなかった。だけど色んなところに、こうやって葉月くんの優しさがあって……」



もっと知りたくて、見つけたくて。



「ひとつ見つける度に、宝物を見つけたように嬉しくなったよ」



いつか、それを集めて本当の葉月くんに繋がるんじゃないかって思ったんだ。



「だから───」


「これはお前が見つけたものだよ」



続きを遮るように私の手に宝石を握らせる。


葉月くんの手が触れて、熱が生まれる。


この手を離したくないと思ってしまうのに、葉月くんの手は離れていく。



「ち……違うよ。これは葉月くんが……」



黒い髪の先からポタリと流れる雨の雫が、葉月くんの輪郭を優しくなぞる。


私は葉月くんから目が離せなくなる。


……だけど。



「誰にも言う必要ないから。俺はここに存在しなかったってことにして?」



今にも消えてしまいそうなほど淡く微笑んだ。



「……っ、」



雨の中に消えていく葉月くんの背中を、私は見つめることしか出来なかった。


追いかけることも出来なかった。


葉月くんは、ちゃんとここにいるよ。


もっと見つけて、葉月くんに伝えたいよ。


だって、葉月くんの秘密を探せば探す程、好きしか見つからないんだよ。