誰ひとり葉月くんには近づこうとはしない中、及川くんは違ったね。



「すごいね、葉月くんは。すぐ気づいちゃうんだもん……」


「別に。倉庫に来てみたらすぐ見つかったよ?」



すぐ……と、葉月くんはなんてことないように答えたけれど。


それは嘘だってわかっちゃうよ、葉月くん。



「ううん。葉月くんが必死に探してくれたから見つかったんだよ?」



目を逸らした葉月くんの制服のズボンは汚れていて、ブレザーの胸ポケットにはメガネが差し込まれている。



「葉月くんは、本当に優しいね」



だって、大事なそのメガネを外したのは、雨に濡れたら視界が悪くて探せないから。


ズボンだってそうだ、土で汚れてるのは膝をついて探してくれたからでしょう?



「優しくなんかない」


「ううん……葉月くんの容姿は、神様に与えてもらったものかもしれないけど。でも、葉月くんの優しい心は、葉月くんがつくったものだよ」



やっぱり隠しちゃうのはもったいないよ。


もっと、本当の葉月くんを教えて欲しい。


葉月くんは何も言わず、ただただ驚いたように私を見つめていた。