「ガッツリ観察って、それじゃあ探偵じゃなくてただのストーカーでしょー!」


「調査だよ!」



今度、正真正銘のイケメン観察とやらを琴莉に教えてあげるわ!と言って、咲希ちゃんは自分の席へと戻っていった。


と、そこへ……。

入れ違うかのようなタイミングで、葉月くんが登校してくる。


ぬぼっとして、猫背で、ボサボサヘア。

“裏”葉月くんと同一人物だなんて!

演技として主演男優賞なみだ……。



「お、おはよっ。葉月くん」



声をかけたけれど、少し頭を動かすだけの反応。


昨日の出来事が全部夢だったんじゃないかって錯覚するくらい、何事もなかったかのように非モテ男を演じてくれるんだから。



「挨拶くらいしたっていいじゃん……っ」


文句を呟きながら、予鈴が鳴ったので席に着く。


すると、隣の葉月くんに、ピッとワイシャツの袖を引っ張られた。



「おはよ。探偵さん」


「っ、」


みんなにバレないように顔を寄せてきた葉月くんが、こそっと囁く。


驚いて見上げれば、口もとが楽しそう。



……わざとやったなぁ!


そう来るなら、こっちも本気で調査するよ葉月くん!