口もとをゴシゴシと拭った咲希ちゃんは、心底呆れたと言わんばかりの顔で溜め息をつく。



「昨日やめなよって牽制したよね?たった一日で何があってそうなったのよ!?」


「えっ」



そ、それは……。


あの整った顔立ちがポンッと頭の中に蘇る。


昨日の放課後、“裏”葉月くんが私の目の前に降り立ちまして……なんてことは、口が裂けても言えるわけがない。


ましてや、秘密にするように釘をさされたのだから。



「昨日よりも興味があるの!」


「男の趣味、変わってるって言われない……?」



決して嘘は言ってない!


だって素顔を隠す程の秘密なんて、よっぽどだよ。


イケメンでモテるのに、あえて非モテ男を演じるぐらいだもん。


あれだけ極上なイケメンなのに、隠しちゃうなんて素直にもったいない。


……って、違うそうじゃない。